「ねえすずろん…」
「………うん」
「これ、完全にさ…」
「………あれだねぇ」
「「桜ちゃんに何かあったよね?」」
私達はモニターを眺めながら溜息を吐く。
実は死者避けの御守りには、発信機が入ってて。
皆帰って来たのに桜ちゃんだけまだだから、心配になってモニターで位置を確認した訳。
そしたら案の定、桜ちゃんは巡回ルートを大きく無視した進路を現在も移動中なのさね。
つまり、何かあったとしか思えない。
「真面目な桜ちゃんがルート無視して爆走するなんて、相当だよね」
ふざけた言い方と裏腹に、すずろんの顔は真剣そのものだった。
何があっても大抵は絶やさないヘラヘラした笑顔が、今回ばかりは封印されてた。
そりゃそうだよ、心配に決まってる。
だって桜ちゃんは私達の大事な親友だもん。
でも。
それを知ってても私は言う。
「桜ちゃんの所に行って来るから、すずろんは待ってて」
そしたら、すずろんは。
「僕も行く…………って言いたい所だけど、了解。足手纏いになるもんね」
思った通り、あっさりと身を引いた。
本当は今すぐにでも行きたい癖に。
「すずろんの物分かり良い所好き〜」
「そりゃどうも~」
モニターから視線を外し、運転席から立ち上がり、私は出口へ向かう。
「皆にはこの事言っちゃ駄目だからね」
確認するまでも無いけど一応訊ねてみたら。
「わざわざ心配と騒ぎを起こす必要は無いからでしょ?
…余りに時間掛かると言い訳がキツくなるし、迅速に戻って来るようにお願いしますよー」
うん、やっぱり分かってた。
「あいあいさ!ここはルピナスさんに任せといてっ」
…よし。
頑張ってきますか!