「さーくらちゃん!起きて起きてー!」
…そんなルピナスちゃんの声で、目を覚ましました。
いけない。いつの間に寝ちゃってたんだろう。
おはよう、と返してから、私は上体を起こし、掛かっていた毛布を畳んでベッドに置きました。
時計を見ると12時を過ぎていました。
「すずろん場所取りで先に行ってくれてるよ~!早くご飯行こ行こ!」
元気にそう言ったルピナスちゃんに背中をぐいぐいと押されつつ、
すずろさんの部屋を後にします。
食堂に向かうと、お昼時なだけあって人が沢山居ました。何処も席は満員です。
「すずろんは何処かなー…っと………………あ、はっけーん!」
手を引かれてすずろさんの元に向かうと、彼は何やら物憂げな表情を………
…しているかと思えば、私達に気付いた瞬間
「やっと来た~!もー、お腹空かせて待ってたんだから~」
と、いつも通り、ヘラヘラと笑い掛けて来ました。
あれ。
さっきのは、目の錯覚?
「ごめんってー場所取りおっつおっつ!
お礼に、すずろんのご飯は私が持って来てあげるよ~!」
特に違和感を感じなかったのか、ルピナスちゃんは変わらぬ様子で
すずろさんの背中をぺしぺしと叩きます。
彼も彼で、何もなかったかの様に言いました。
「やっほーい!じゃあフライドチキン定食よろ!」
「へい、唐揚げ定食一丁!少々お待ち下さいねー!
…桜ちゃん、行こっ!」
「う、うん」
ルピナスちゃんとカウンターに向かう途中、ちらりとすずろさんの様子を窺ってみると…
……彼は、頬杖を突いてうきうきしているみたいでした。
考え事をしている風には見えません。
やっぱり、さっきのは気のせいだったのかな。
ラーメンをズゾゾーッと啜っているルピナスちゃんの向かい側で唐揚げを頬張りながら、
すずろさんは彼女に訊ねます。
「今日はまたゲーム?」
ルピナスちゃんは、ナルトをすずろさんの唐揚げ定食にしれっと乗せながら首を振りました。
「んーん。昨日引き篭もってた分、アクティブにいこうと思ってる」
「健康的だねえ。若いっていいねえ」
「いやいや、三十路だってまだまだ若いでしょーが。
何ヨボヨボの年寄りみたいな事言ってんの」
「あと5年もすれば40歳の僕でも、若い…?!」
「ピッチピチだよ。私から見たらね」
「わーい!」
「いや、私から見たらだからね?」
ルピナスちゃんが呆れた様に言うと、押し付けられたナルトを仕方なさそうに食べながら、
すずろさんは、知ってるってばーと笑いました。
山盛りの桜餅(私の好物です。大好きです)を黙々と食べていると、
すずろさんの唐揚げを何食わぬ顔で一つ口に運んだルピナスちゃんが、再度口を開きます。
「で、今日のプランなんだけどさ」
こくこくと私とすずろさんが頷くのを確認した後、彼女は高らかに宣言しました。
「まず最初に遊園地で程よく絶叫してから水族館でイルカショー見て映画館でちょっと休憩した後に朝までカラオケな!!!!!!」
「容赦なーーーーーーーーーーい!!!!!!」
あ、すずろさんの笑顔が引き攣ってる……まあ、一日でやるにはハードな内容ですもんね。
でも楽しそう。
という訳で、挙手しました。
「私、賛成!」
「桜ちゃーん!そう言ってくれると信じてたよ~!」
すずろさんの唐揚げをまた一つひょいと割り箸で器用に掴んだルピナスちゃんが、
にこにこしながら私の口にそれを近付けてきたので、せっかくですし頂きました。
わー美味しい。
「段々僕のメインディッシュが二人の胃の中に消えていってるんですが?!」
「きっと気のせいだよすっずろーん!!」
手をつけていない桜餅をお詫びに差し出すと、
すずろさんはやつれた笑顔で受け取ってくれました。
「では、腹ごしらえも済んだし!早速いってみよー!」
「おーっ!」
と腕をあげた私に続けて
「お~~」
何だかんだで参加する気満々らしく、すずろさんも腕をゆるゆるっとあげます。
ふふ、楽しみだなあ。