世界滅亡による喧騒は、嘘の様に落ち着いていた。
きっとルピナスが迅速な対処でもしたんだろう。
普段は適当だけど、やる時はやるから。
…それにしても、廊下から聴こえていた空腹を訴える声や娯楽不足による不満。
当人らにとってはそりゃ死活問題なのかも知れないけど、呑気なものだ、と思う。
だって向こうの世界は比べ物にならない位酷い状況だったろうし。
あの子は計画の為ならきっと手段を選ばないから、
どれだけの惨事を引き起こしたかは考えるまでも無い。
手っ取り早く世界を滅ぼそうとしただろうし、
世界が機能しなくなる程に人を殺したんだろうって、安易に想像がつく。
…世界が滅亡したという事は、あの子の計画が順調にスタートを切ったという事と同義だ。
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…複雑だなぁ。
あーあ。何で協力するとか言っちゃったんだろう僕。
そりゃあ、あの子のおかげで今僕は此処に居る訳だけど。
それでもやっぱり友達を騙さなきゃいけないのって、こう、良心が痛む。
今更、断れば良かったなんて後悔しても遅いのは分かってる。
分かってるけど、全部知ってるのに口外しちゃいけない立場って中々に辛い。
っていうかそもそも、あの計画って誰が得するんだろう。
ハッピーエンドかバッドエンドかって言われたら、僕的には後者なんだけど。
とはいえ人が決めた事に口出しするのもあれだし、
そもそも既に始まってるものをちっぽけな人間である僕には止めようがない。
それに
ルピナスも桜ちゃんも僕も無事で居られる様にするには、この計画に乗るしか無かったし。
騙す事で救えるのなら、そうするしかない。
騙す事で傷つく事を避けられるのなら、やらざるを得ない。
だから、投げ出さずにやらないといけない。
僕が出来る事を。
…でも、あの子はこれで良いのかな。