目が覚めたと同時に、自分が何かにしがみついている事に気が付く。
それが何なのか判断するのに、時間は必要なかった。
夜あった出来事が、走馬灯の様に流れる。
……………そうだ。
俺は、サクラに。
薬の効果が持続している時間であったにも関わらず、何故か目は現れ…あの声が聴こえてきた。
早々に身体が薬に慣れてしまったのだろうか。
だとしたらまずい。
作った薬の在庫には当然限りがある。
少しでも長く持たせなくてはならないのに、多く服用する事にしてしまうのは良くない。
そもそも多量の薬の摂取は危険だし、
今の配合は丁度良いバランスだから…どうしたものだろう。
そこまで考えて、まだサクラに密着したままだという事にハッとなる。
いけない。
考えるよりも、まずは離れなければならなかったのに。
上体を起こそうとしたその時。
サクラの腕が、背中に乗った。
…払おうと思えば簡単に払える程の、微細な力だった。
まだ彼は眠っているのだから、意図的という訳では無いし、それも当然で。
おそらく、寝がえりの様なものだったのだろう。
…………………。
………。
…。
離れないといけないのは分かっている。
偶然なのも分かっている。
だけど。
もう少しこのままでも良いのだと。
そう言って貰えた気がして。
生身の人と触れ合うのは、いつ振りだったか。
幼い頃に教授が撫でてくれた時以来かも知れない。
リヴやイリーナ以外の誰かを抱き締めたのは、自分が知る中で初めてだった。
赤ん坊の頃、孤児院の前へ捨てられた俺には、そんな経験はなかった。
何故サクラは俺を助けてくれたのだろう。
嫌われたのでは無かったのだろうか。
それとも、嫌いでも見捨てられず、仕方なく…だったのだろうか。
何はともあれ、もし嫌われているのなら。
もうこんな行為を許してくれないに決まっているし、これが最後になるだろう。
…あと、少しだけ。
このままで。